ライターとして日夜レアなバイクを探し求めるワタシでも、一度しか出会えなかったモデルがあります。そんなレアな単車を「遭遇率0.01%マシン」と名づけました。カタログや本でしか見たことがなかったバイクが目の前に現れた衝撃は忘れられません。その時の思い出話とともに、3つのバイクを紹介します。
冬期間の預かり倉庫で遭遇「250 CS (1985年)」

「カワサキ・250 CS 」はレーサーレプリカブーム真っ盛りの時代に登場しました。車名は「Casual Sports」の略で、その名の通り気軽に乗れることをコンセプトにしています。パワーユニットは、ダートバイクKL250Rの水冷4ストDOHC4バルブエンジンを流用。キャブを大径化することで28ps/9000rpmから34ps/10000rpmへと大幅にパワーアップし、二次減速比をハイギヤード化しています。

「開発者が自分たちが乗りたいバイクを作った」という触れ込みでしたが、欲しいと思ったのは開発者と一部のライダーだけ。今なら「250ccの水冷シングルって渋いよね」と言われるかもしれませんが、4ストローク4気筒全盛の時代には、理解され難いバイクでした。

全国からカワサキ車が集まる「カワサキ・コーヒーブレイクミーティング」ですら見かけることがない「250 CS」ですが、1990年前半に冬期間バイクを預かる倉庫会社のバイトで遭遇しました。多種多様なバイクの中でも250 CSは1台だけ。とてもレアでした。
日本最北端のライダーハウスで遭遇「AG200 (1983年)」

AG200の車名の「AG」は、農業を意味する「Agriculture」が由来。主戦場は、国内ではなく広大な土地が広がる異国です。農業と言ってもトラクターのように田畑を耕したり、コンバインのように田植えをするわけではありません。例えるなら牧羊犬。広大な農場や牧場、放牧地を見回ったり、牛や羊を追ったりするのが主な役割です。

エンジンは空冷4ストOHC2バルブ単気筒、ボア×ストローク67×55.7mm/最大トルク1.5kgf・m/6500rpm/最高出力14.3PS/7500rpm。スピードよりも、タフさと粘り強さが与えられています。ダートバイクと言えども一般道の走りやすさが求められますが、AG200は仕事を遂行することに徹底。国内でも販売されていましたが、売れ行きはサッパリでした。

お目にかかる機会が少ないAG200ですが、私は2000年頃に稚内・ノシャップ岬近くのライダーハウス「サガレン」の納屋で遭遇しました。当時はAG200の存在を知らず、不思議なバイクがあるという程度の認識でした。ライダーハウスのオーナーが所有していたそうですが、残念ながら詳しいことを聞けずじまい。きっと外国並みに広い北海道で、仕事に精を出していたのでしょうね。
自称デザイナーに遭遇「 エリミネーター125(1997年)」

「エリミネーター125」は、1980年代にラインアップしていたエリミネーターシリーズとも、近年発売されたエリミネーターとも一線を画する異端のモデルです。パワーユニットは空冷4ストローク単気筒エンジンを搭載。タイカワサキで生産されたグローバルモデルです。

そんな「エリミネーター125」に遭遇したのは、どこかのライダーハウスでした。やたらとテンションが高いライダーが、「自分がエリミネーター125をデザインした」とのたまっていました。
彼の話はこう。「自分が思いついたデザインをカワサキに送ったんだけど連絡はなかったんだ。でもエリミネーター125を見た瞬間『俺のデザインだ!』って確信したね」と、唾を飛ばしながら熱弁していました。基本的なデザインは同時期に発売された「エリミネーター250V」と変わらないのに、なぜ125ccと言い張るのかも謎です。

ラフスケッチを見せてもらいましたが、クルーザータイプはどれも似たようなデザインになりがち。ましてやカワサキが無断で素人のデザインを使うわけがありません。まわりの人たちは「おめでたい奴」と言う目で見ていました。しかし、彼の勘違いでエリミネーター125が購入され、ワタシと出会えたので、それはそれで素敵なことなのでしょう。
エリミネーター125の写真は「のさのさん」が提供してくれました。
一期一会の出会いは大切に!

今回タイトルにした「遭遇率0.01%」とは、サイコロを5回振ってすべて同じ数字が出る確率です。簡単そうで難しい。バイクとの出会いも同じです。気になるマシンを見つけたら、オーナーに話しかけて写真を取らせてもらってください。

