バイクの装備には多種多様なものがありますが、技術の進歩により近年ではあまり見かけなくなったものも含まれます。
そんなバイクの装備の中のひとつに、「燃料コック」がありますが、その機能やメンテナンスについて深掘りして考える機会はあまりないかもしれません。
ただ、人気のある旧車やキャブレター車を選択する際には必須知識となるため、どのように取り扱うかといったことは確認しておきたいものです。
燃料コックには負圧式と重力式がある

バイクの燃料コックは主にキャブレター車に採用されていたものであり、現行モデルのほとんどが採用している「フューエルインジェクション(FI)方式」とは異なる、アナログな機構です。
そのため、近年では目にする機会が少なくなっていますが、旧車や一部のオフロードバイクには引き続き搭載されている場合があります。
2タイプの燃料コックとその役割
燃料コックは、燃料タンクからキャブレターへ供給する燃料の流れを制御する装置です。
タンク内の燃料がキャブレターに流れ込むことで、エンジンが正常に動作しますが、この燃料の供給を手動で制御するのが燃料コックの役割です。
燃料コックには「負圧式」と「重力式」の二つのタイプがあり、それぞれ異なる仕組みを持っています。
まず、負圧式はエンジンが稼働しているときにだけ燃料を供給する仕組みです。
エンジンの負圧を利用して燃料を流すため、エンジンが停止している状態では燃料が流れません。
この仕組みにより、、長期間の保管時に燃料が漏れ出すリスクを低減できるという特徴があります。
また、負圧式の燃料コックは通常、「ON」「RES(リザーブ)」「PRI(プライマリー)」の三つのモードを備えています。
燃料コックの3つのモードと使用場面
燃料コックのONは通常の走行時に使用するモードであり、燃料タンク内のメイン燃料が消費される設定になっています。
RESは、燃料が少なくなった際に予備燃料を供給する役割を果たすのです。
このリザーブ機能があることで、急なガス欠を防ぎ、給油までの猶予を確保することが可能になります。
なお、FI車では燃料警告灯が点灯することで燃料が少なくなったことを知らせますが、キャブレター車ではリザーブモードが燃料警告灯に相当します。
「PRI(プライマリー)」は、キャブレター内の燃料を強制的に流すモードです。
通常の状態では、負圧が発生しないと燃料はキャブレターに供給されませんが、ガス欠後の始動時には負圧が発生しないため、エンジンをかける前に「PRI」に切り替えることで燃料を供給します。
また、キャブレターの内部に燃料が十分に供給されていない場合や、長期間使用していなかったバイクを始動させる際にも、このモードを活用することでスムーズにエンジンを始動させることができます。
次に、重力式はタンク内の燃料が重力によってキャブレターへと流れる仕組みになっています。
負圧を利用しないため、エンジンが停止していても燃料が流れ続ける可能性があり、長期間バイクを使用しない場合は手動で燃料の供給を止める必要があります。
一方で、燃料コックを「OFF」にすることでキャブレター内の燃料が蒸発し、詰まりを引き起こすのを防ぐことができるはずです。また、重力式の燃料コックも「ON」「RES」「PRI」のモードがあります。
燃料コックは定期的な清掃と交換が必要

燃料コックに関係するバイクの不具合
燃料コックが劣化すると発生するさまざまな不具合について紹介します。
燃料コックに関連する不具合として、もっとも分かりやすいのはエンジンの始動性の悪化です。
燃料コックが正常に機能しないと、当然キャブレターに適切な量の燃料が供給されず、エンジンがかかりにくくなる場合があります。
また、燃料漏れが発生する場合もあります。
燃料コックのガスケットやパッキンが経年劣化すると、密閉性が低下し、燃料が漏れ出す可能性があります。
バイクの駐車後にタンク下やエンジン周辺に燃料の染みが確認できる場合は、燃料コック周辺のパーツが劣化している可能性があり、早急な点検が欠かせません。
内部のOリングやゴムパッキンといった部品は、燃料の流れを制御し、密閉性を維持する役割を担っていますが、時間が経過すると硬化したり、ひび割れが生じたりすることがあります。
特に、長期間使用しているバイクや、気温の変化が激しい環境に置かれている車両では、ゴムパーツの劣化が早まりやすいため、定期的な交換が推奨されています。
また、燃料コックの内部でのつまりも不具合の原因となります。
燃料タンク内に微細なゴミやサビが混入すると、燃料の流れが阻害され、エンジンの燃焼効率が低下する可能性があります。
そのため、汚れがひどい場合は清掃や交換をおこなうことが必要です。
燃料コック周辺のメンテナンス
さらに、燃料コックを管理していくうえで、何点かチェックポイントがあります。
まず、定期的な動作確認が挙げられます。
燃料コックが適切に開閉できるかを確認し、動きが固くなっている場合は潤滑剤を使用することでスムーズな動作を維持できます。
他のメンテナンスの方法としては、燃料コックを分解し、Oリングやパッキンの交換をおこなうことでも、不具合を解消できる場合があります。
ただし、パーツ単体の交換では症状が改善しないケースもあり、その場合は燃料コック全体を交換することが推奨されています。
ただ、燃料コックの分解作業には細心の注意が必要です。
部品を取り外す際にゴミや異物がキャブレター内に入ると、エンジンの調子に影響を及ぼす可能性があります。
言うまでもなく、作業をおこなう際は清潔な環境で慎重におこない、取り外した部品はしっかりと管理することが重要です。
もし自分の手でおこなうのが難しい場合には、バイクショップ等で状況を相談するとよいかもしれません。
これらのメンテナンスは、バイク全体の寿命を伸ばすことにもつながります。
まとめ
近年ではFI車が主流となり、燃料コックの必要性は減少しましたが、旧車やオフロードバイクを中心に依然採用されているモデルもあります。
キャブレター車を所有している場合や、これから購入を検討している人は、燃料コックの役割や操作方法を理解しておくと、いざというときに適切な対応ができる可能性が上がるかもしれません。

